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七夕のお話(ピエールとナポレオン)



 ちょっとお高いヘッドフォンを購入し満足満足な塞です。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 さすが、上等なヘッドフォン…びっくりするぐらい音がいい。さすがに諭吉さんが飛ぶようなものは買えませんでしたが、それでも私の中では高価な買い物となりました。ううん…これはすごい…。



 さて、本日はやっとこさ…10日過ぎての七夕のお話。やっとフランスかけました。初書きってのは結局のところじぶんのなかでキャラクターの特徴がつかめぬままのものだがら、なんだろ…らしくない。うん、らしくないのです。お互いに…。ね。そして、今回視点をナポレオンにしてしまったので、余計に難しく感じたのかもしれないのです。まぁこれについてはまた後日…
 さて、えっと、少なくとも私はフランスコンビ好きですよ。ピエナポ…扉が開くぐらいにゃ好きですよ。ってか好きになりましたね。Jrユースで流した涙の意味、価値は…大きい。
 まぁグダグダいうのはやめまして、とにかく七夕…です。楽しんでいただけたらこれ幸い。それでは続きからどうぞ
 ではでは、ご飯を食べてきます! それではみなさんまた次回!


あらすじ↓
 ピエールとナポレオンが2人で笹に飾り付けてます(あらすじにもなってない)



 今から面白いパーティーをするんだが、良かったらおいで…。そんな電話がかかってきたのは夜、陽も暮れた時間であった。シャワーを終え、さて、明日の練習に備えようとしていたナポレオンは突然のパーティーのお誘いに眉をひそめる。


「…今からか?」


 こんな時間に…思い付きにもほどがある。それに巻き込まれるなどたまったもんじゃない。せっかくの誘いではあるが、断ろうと口を開いた瞬間、向こうは何かを察したのだろう、ナポレオンより先に話し始めた。


「そう、今日、今から。今日でなければならないらしいパーティーなんだ。もちろん…」


 来てくれるよね。受話器越しに聞く甘い声に、折れてしまう自分はきっとまだまだ未熟なんだ…。先ほどまでそれこそ、喉元まで出てきていたセリフは、スッと胃の淵に落ち、己の気持ちとは正反対のセリフがひょっこりと出ていってしまった。


「ああ、それを聞いて安心した。それじゃ待っているよ。あ、迎えをよこそうか?」


 彼なりの気づかいなのだろうが、バカでかい車が道をふさいでしまうのはどこか気が引ける。それにそこまでしてもらうのはなんだか癪でもあった。
 彼の申し出を乱暴な言葉で断る。ピエールはそれでも愉快そうに笑い、ではなるだけ早く来てくれ、と言い残し電話を切った。早く来いと言われても、こちらにもそれなりの準備があるというのだが…うだうだ考えるのも面倒だ、それにいきなり誘ってきたあっちの方。土産がなかろうが、身なりがおかしかろうが、文句を言う資格なし。
 ナポレオンはまだ若干湿っている髪を簡単に整え、服も部屋に投げ散らかしてあるものを適当に選び、引っ掛けるとそのまま外に飛び出していった。



 ライバル…もとい友人…いや、それ以上の…適切な言葉が見つからぬ関係の彼の突然の呼び出しに、やや不機嫌なナポレオン。急いで彼の豪邸を訪ねれば、出迎えた彼は少し驚いたような顔をする。そして、意外と早かったね、と言って中に招き入れた。
 何が、意外と早かったね、だ。できるだけ早く来いといったのはそっちではないか。それを守っただけのこと。それ以上に、彼の言葉を律儀に守っている自分もなんだか面白くない。だだっ広い応接室に通されたと思いきや、呼び出し主は何の説明なく、340㎝程度の笹の枝を渡してきた。なんだよこれ…と聞いたところで、彼はフワリと笑うだけ。そして、そこにナポレオンを残したまま何処かへ行ってしまった。しかたなく、立派な革張りのソファに座り、出されたカフェオレを豪快に飲む。相変わらず美味いな…などと考えつつ、手元にある笹を指先で弄る。作り物ではないその感触。匂いもまた自生していたものだろう。といっても、このフランスで笹など自生しているところを見たことがない。ということはわざわざ外から取り寄せたのだろうか…。たぶん、そういった面で彼に不可能はないのだろう。しかし、いったいこれが何だというのだ。
 パーティーだと言っていたが、自分以外誰もいない。…騙された、ナポレオンの中にふつふつとした怒りがこみあげてくる。ただでさえ、自分の時間、自分の予定…といっても大したものではないのだが、それらを潰してまで来たというのに…。さらには、この待ちぼうけ状態。ナポレオンは居ても立っても居られず、ソファから立ち上がる。


「おや? どうしたんだい?」


 ナポレオンが立ち上がったと同時にピエールが扉の向こうから現れる。手にはカゴを抱えている。その中身はナポレオンの位置から確認できない。


「……別に…」


「どうせ帰ろうとしてたんだろ? 悪いがそうはさせないよ」


 ころころと笑うピエールに、バツが悪そうなナポレオン。乱暴に頭を掻いているその表情はなんとも冴えない。
 なんだかんだ、彼に弱い。今だって、彼を無視して出ていこうと思えばできないわけではない。だが、それが、なぜかできない。結局彼に振り回されてしまうのだ。そしてそれが嫌ではない自分がいる。先ほどまでの怒りは増殖を止め、徐々に小さくなっていく。これが、惚れた弱みというやつかどうかは、よくわからない。


「今回のゲストはルイだけなんだ。居なくなったりしないでくれよ?」


 滑るように軽やかにピエールは立ち尽くす彼に近づくと、待たせて悪かったね、と彼を引き寄せ、優しく唇を合わせる。それはほんの一瞬、あいさつのようなキス。軽いリップ音とともにピエールは離れ、しばし見つめ合うとニコリと微笑んだ。ナポレオンの力が一気に抜ける。
 彼はこういうやつだ。いつも好き勝手やって…自分をどうしようもなく乱れさせる。ピエールのような大人のような、緩やかな付き合い方というものの経験がそう多くないナポレオンは毎回心乱れる。性急な、それこそ身体の付き合いが多い彼にとっては全てが新鮮で、困惑するのだ。自分がどうすればいいのかわからなくなるのだ。


「て、めぇ…」


「まあそう怒るなよ。ほら、座って座って」


 ピエールは持っていたカゴをテーブルに置くと、彼の両肩に手を置き、軽く力を込め座るよう促す。素直に従うのはなんだか面白くないが、逃げる口実もなく…と言っても、彼が逃がしてくれそうにはないのだが、促されるままに腰を下ろした。そんな彼に寄り添うようにピエールもまたその横に座る。


「で、なんだよ。そのパーティーって。しかもオレだけ?」


 何考えてんだ、と彼を睨めば、彼はそんなことお構いなしに微笑んで、テーブルに置いてあった笹に手を伸ばした。


「そう、ボクと君だけのパーティーさ」


 ピエールが言うには、このパーティーはミサキに教わったそうで、笹に紙を飾りつけ、それに願いを書くというもの。ナポレオンの頭の中にクリスマスのモミの木が浮かび上がるが、それほど華やかでもないらしい。


「願い事…ねぇ。何の意味があるんだそんなことして」


「おまじないみたいなものだろう? それで、飾り付けた後にはその笹をもって星空を眺めるらしいんだ」


「星空?」


「そう、今日はね、特別な日らしいんだ」


 一年に一度だけ恋人に会える日…ピエールの瞳が愛おしそうに揺れる。一年に一度だけ離れ離れになった恋人が会うことを許された日。
 ピエールは彼に今日の日の由来を話し始める。その表情はどこか優しい。


「なんだかロマンチックじゃないか?」


「…別に、そんなの我慢せずに会いに行けばいいじゃねぇか。わざわざそんな約束守んなくてもよ」


 つまらぬ話だ、と言わんばかりのナポレオンの態度。一年に一度など誰が我慢できるものか。確かに、彼らの怠惰な態度はよろしくないとは思うが、だからと言って一年に一度の逢瀬を許すというのも、ナポレオン的には納得できない。たった一度しかない一日に果たして己ならば我慢できるのだろうか…自分ならば………。


「二人の間には大きな川が流れてて、会いに行けないんだってさ。今日はその川に橋が架かる日らしいよ」


 それを見に行かないか? 星空を見上げるというのはそういうことなのだ。もっと賑やかなものを想像していたナポレオンであったが、話を聞く限り、どちらかといえば静かな、静寂を楽しむようなものなのだとわかった。


「たまにはいいじゃないか。そういう静かなパーティーも、さ」


「だからって、よりにもよってオレかよ…」


 彼のことだ、誘おうと思えばもっと静かでおしとやかで、そういったことに興味の尽きないロマンチストでもよかったのではないか。別に、自分でなくとも…。
 彼が声をかければ付いて来ぬやつなどいない。それほどまでに魅力的なのだ。そのうちの一人が己であると考えると、やっぱり腹が立つ。彼の言うことを聞くつもりなどないのに、不思議と頭より体が動いてしまうのだ。


「そりゃそうさ。だってこれは恋人同士のパーティーだからね」


 さらりと言いのけるピエールに、ナポレオンは一瞬何を言っているのかわからなかった。


だってさ、一年に一度の逢瀬の日…。そんな日にはやっぱり恋人と過ごすのが一番だと思わないか? だからボクは君を呼んだんだよ」


 理由なんて、それで十分だろ? 笑みを崩すことのないピエール。そして、彼の直接的な物言いに言葉を詰まらせるはナポレオン。


「それにね。ミサキにこの話を聞いた時から、この日は君と過ごそうと思ってたんだ。まあこうやってルイも来てくれたことだし」


 ボクとしては大満足なんだけどね。そう言って、彼は持っていた笹に装飾を施し始める。彼は自分の持ってきたカゴから、色とりどりの画用紙で作られた飾りを取り出し、器用に笹に括り付けていく。どうやらそのカゴの中身はこの笹を飾るための物が入っていたようだ。手作り感満載のそれらをピエールがわざわざ作ったのだ、彼がどれほど今日を楽しみにしていただろうか…ナポレオンはそれを思うと無下にはできない。
 だが、そのカゴの中には、見慣れた、冬の寒い日によく見る装飾も混じっているのがナポレオンの目に入った。


「飾り、先に作ってたんだな」


「キミはこういうの苦手だろ?」


「…まあ、そうだけど」


「ほら、早く。ルイも飾りつけしてくれよ。君と一緒にやりたいんだから」


 カゴをナポレオンの方へ寄せると、ピエールは笹も差し出してくる。綺麗に形作られた画用紙が貧相だった笹をとても賑やかにする。品のある賑やかさ…と言った方がいいだろう。せっかくここまで美しく彩られているのだ、あえて自分が飾るまでもない。そう思ってはいても、彼の、このパーティーを楽しみにしている彼の青い目にかなうはずがない。
 ナポレオンはカゴの中をチラリと見遣り、先ほど目に入った、クリスマスオーナメントを手に取ると、それを器用に飾り付ける。そして笹の天辺には星のオーナメントをちょこんと、それはそれは器用に乗せて、終わりだ、とピエールに声をかけた。


「………ルイ…」


 彼の飾り付けを見て、なにか言いたそうなピエール。目を細めて睨む彼に、悪ガキのように笑みを浮かべるナポレオン。


「これはクリスマスではないだぞ」


「クリスマスオーナメントを入れとくお前が悪い」


「まったく…君には参るよ」


 ミサキに教わったものとはだいぶ違う形になった、と独り言ちるが、それでもその声は明るい。


「で、この後どうするんだよ」


「この短冊に願い事を書いて飾る、そのあとは星空でも見に行こうか」


 笹をテーブルに丁寧に置き、ピエールは一枚の赤い短冊を渡してくる。ナポレオンはしばらくその短冊を眺めていた。隣を見れば、彼はさっそく何かを書き始めている。

 何を書けばいいか、願い事。叶えたいことは山ほどある。ただそれは願ってどうにかするものではないし、ましてや形に表わしてしまうのはどうも陳腐な気がして仕方がない。自力でつかみ取ってこその願いばかりなのだ。それをあえて決意表明のごとく書いてしまってはなんだかとても安っぽく感じる。それの、そんな柄ではないのだ。では、どんなことを書こうか。

 ナポレオンはボーっとピエールの横顔を眺める。ああ、そういえば…ナポレオンはフッと思い出す。自分の叶えたいことのすべてに彼が関係している、と。サッカーにしろプライベートにしろ…すべての事柄、すべての願いに、願望のどこかに彼がいるのだ。それほど意識していたわけではないのに、自然と彼を見ていたのだ。おかしなものだ。ならば、きっとこの紙に書く願いもまた彼に関するものなのだろう。
 ナポレオンはしばらくの間彼の横顔を眺めた後、カゴの中からペンを取り出し、へたくそな字で乱暴に願い事を書き始めた。


 


「おい、終わったぞ」


「ボクもだ」

 
 さぁ、外に出よう。ピエールはソファから立ち上がると、ナポレオンに手を差し伸べる。それだけでも様になる彼だ、自分の中がざわつくのが嫌でもわかる。乱暴にその手を取り、立ち上がると、置いてある笹に手を伸ばし持ち上げた。


「おまえ、なんて書いたんだ?」


「そういう野暮なことは聞かないことだ」


 にこやかに答えるピエール。彼の願い…きっと想像がつかないぐらい突拍子もないことが書いてあるような気がしてならない。それに比べ、自分はとても単純明快。どうせピエールしか見ないのだ、ならば少しぐらい、この時ぐらい、正直になってもいいだろう。そんな願い事を書いてやった。


「それに、ボクが教えても、君は教えてくれないだろ?」


「…まぁな、どうせ飾るんなら自分で読めよ」


 絶対に言わないからな、その言葉に隣の彼はうれしそうに眼を細める。きっと彼にはその意味が分かるのだろう。


「そうだね、ボクも言わないから、ルイが…読んでおくれ」


 その声音と表情にナポレオンも何となく察しがついたようで。

 
「ああ…声に出して読んでやるよ」


 そう返せば、それはそれは満足そうに笑うピエールと、フンッと鼻を鳴らすナポレオン。

 二人は寄り添いながら応接室を後にする。彼らを待つは満天の星空。



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