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手を引く





 足の裏が痛くてたまらない塞です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。
 ここ数日前から足の裏がずきずき痛みはじめまして、でも、足の裏ってどこに行ったら見てくれるんでしょうね。……整形外科とかですかね…わからん………
 

 さて、本日は短いお話を一つ。原稿に行き詰まった時にちょろっと書いたものでして、たいして何もありません。はい、本当になにもありません。なんかシュナイダーが、エセシュナイダーとなり、エセミューラーとともになんだかごちゃごちゃしております。原稿合間に書いたものだから本当になにもないんですよねぇ~。
 それでもよろしい人はつづきからどうぞ



 あらすじ↓
 ミューラーさんがシュナイダー家を訪ねる…直前のお話(きっとそんなお話…?)





 何度か説得を繰り返し、やっと彼をミュンヘンへ呼ぶことができた。と言っても、チームメンバーとしてではなく、一人の友人、一人の恋人として…。いつも自分ばかりが彼の部屋を訪れるのは申し訳ない気がする、だから次の休日にはぜひ我が家に来てほしい。彼に会うたびそう言ってきた。初めは眉間にしわを寄せて『いつか行く』と返事をしていたのが、二週間前のある日、やっと彼はしぶしぶながらも、了解してくれた。さぞ、鬱陶しかったであろう。それでも、やはり恋人が家に来るという事実は何にも代えることのできない幸福感を生む。それが初めてであるならなおのこと。弾む心にシュナイダーは終始笑みを浮かべていた。


「ミューラー!」


 ミュンヘン中央駅。改札を通り過ぎた彼の姿を見つけ声をかける。人でごった返している中央駅でシュナイダーの声が聞こえたのか、ミューラーはすぐにシュナイダーの方を向いた。

彼の姿は大きく、人込みに紛れ込んだとしてもすぐに見つけることができる。しかし、彼からすればその逆。人込みに紛れてしまえば、シュナイダーの姿を見つけることが困難だったようだ。過去に、同じように駅で待ち合わせしたとき、シュナイダーが近づいてきているというのに、ミューラーはその姿を捉えることができず、勝手に反対の方向へ歩いて行ってしまったことがある。あわてて駆け出し、何とか事なきを得たのだが、それ以降、彼には改札を出たらその場から絶対に動くな、と言ってある。必ず迎えに行くから、と。


「シュナイダー…本当にいいのか?」


 近づいてきた彼が発したのはその一言。こころなしか表情も暗い。
 何をいまさら遠慮しているのだろ。シュナイダーは少しムッとする。彼と約束を取り付けたその日からもう
週間も経っているというのに。その間、どれほど自分の調子が良かったことか、そのせいであらぬ噂までたってしまい…たいへん不愉快ではあった。だが、それもこの日を想えば耐えることのできた小さなものだ。それもすべてはこの日のため…


「かまわない。母さんやマリーも楽しみにしている」


 父に至っては、同じサッカーをやっている者、ましてやWYでは共に戦ったチームメイトということもあり、彼に興味津々だった。しかし、それを伝えてしまえば、彼は余計に気を使うか、警戒してしまうかもしれないのであえて言わないでおく。


「そうか………」


 やはり気になるらしい、彼らしい元気がない。多分その原因は自分たちの関係性にある。この特別な関係。本来の歩むべき道とは異なる道を進む自分たち。それが負い目となってやってくるのは、きっと今、この瞬間だろう。家族に会う、たったそれだけのことなのに、この関係のせいでそれすら大きな壁となる。その壁に当たった時こそ、何より重い罪の意識となって襲い掛かってくる。だが、それの何が悪いというのだ。恥ずべきことなのか? それは、ここまで苦しむべき罪なのか? ここまで苦しまねばならぬ関係なのか? シュナイダーにはそれが納得できなかった。少なくとも自分たちの関係には誰も口を出す権利はないはず。たとえそれが家族てあろうと、きっと自分は許さないだろう。
 正直なところ、自分は皆に言いふらして歩きたい。あらぬ噂に振り回されている、うるさい外野に向かって彼が自分の恋人であると言い放ってやりたい。それほどまで彼を想っている。ただ、それは大きな意味で彼を苦しめることになることも、十分に理解しているのもまた辛い。


「ミューラー…心配するな」


 小さく見えるその背を軽くたたく。これですべてが、自分のすべてが伝わればいいのに…


「心配…するさ。このわけのわからん罪悪感をどうにかしてくれ…」


 情けないほどに小さい声。予想は的中。彼を悩ませている原因は、やはり…


「お前が罪悪感を持つ必要はない。オレがお前に惚れてお前を巻き込んだ。やさしいお前がそれを受け入れただけだ。何も悪くない」


「…本気で言って言ってるのか…?」


「え?」


 彼の声色がかわる。突然怒りを含んだ低い声がシュナイダーの耳に飛んできた。口はへの字に曲がり、明らかに機嫌が悪い。


「……惚れてるのはおれも同じだ。勘違いするなよ」


「…………フフッ」


 ああ、なんと幸福な時間だろう。このタイミング、この場所で、まさか彼からこんな言葉が聞かれようとは。あまりの嬉しさに、もう笑うことしかできない。人は幸福に浸れば浸るほど、言葉というものを失っていくのだろう。そこに現れるのは、純粋な、原始の時代から存在する感情だけだ。


「笑うなよ…」


「笑わずにいられるか」


 ふん! と鼻を鳴らすと、彼はシュナイダーを置いてさっさと出口に向かって歩きだす。


「さっさと行こう、待ってるんだろ?」


 肩越しに振り返るミューラー。どうやら腹を括ったようで、その眼に迷いはなく、先ほどの小さくみえた背中はいつの間にか消えていた。


「ああ…」


 先を歩くミューラーの手を取り、駅構内を彼を引っ張るようにして突き切る。


「お、おいシュナイダー」


 強く引く手に戸惑うミューラー。しかし、シュナイダーお構いなしに彼を引く。


「早く家族に紹介したいんだ。それに、迷子になったら困るだろ?」


「ま、迷子になったってすぐに見つけるのはどこのどいつだ!」


「オレ以外に誰がいる」


 その自信に満ち溢れた声に、何を言っても無駄だと悟ったのか、ミューラーからはため息が漏れ、大人しく彼に引かれていった。






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