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5/22 ing!6 頒布の海外キャラアンソロジーのサンプル


 sampleばっかり上げて申し訳ありませんが、あげます!
 続いてアンソロジー用に書かせていただいたものをほんの少しだけ公開します。
 主催者様にはその旨をお伝えしてあるので、きっと…大丈夫だと思います!!!!
 では、グダグダ書くのもあれですので…



【アンソロ提出原稿】
 タイトル:小さな恋の物語
 中心キャラ:ドイツ(シュナイダー×ミューラー)
 表現:女性向け、キスあり
 形式:小説
 頁数:18頁

本文↓

小さな恋の物語

それは一目惚れであり、初恋だった。
 彼のことは知っていた。しかし、彼の全貌を見たことはなく、所詮はただの噂であろう、そんな風に考えていた。風の噂で知った存在…そう言った方が正しいのかもしれない。しかし、その姿を目の当たりにしたとき、当時の己では到底想像もつかぬ感情の中へと無意識のうちに落ちていったのだ。その音は、己の鼓動と試合の最中に訪れるあの、何とも言えぬ高揚感にかき消され、落ちているなど気付く由もなかった。しかし、己の眼は…この双眼だけは自然と彼を追っていた。おかしなことに、それに気付いたのは全てが終わってからのことである。ああ、なんということだ。人を目で追うなど、そう経験したことはない。いつも他人への関心が薄く、孤高であったというのに彼はスルリと己の内側に侵入してくるのだ。静かに、そして急速に。
 
それはほんの一瞬の出来事。
 
姿を追っていた眼が、彼の大きな、幼い陰を残した双眼とぶつかり合う。
 不思議そうに首を傾げながらニコリと笑う彼の姿が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

 

ミュンヘンほど大きくはないものの、それなりの規模を誇るシュトゥットガルト中央駅。二時間半という列車の旅も、想い人に会いに行くと思えば早く、短いものである。列車に乗りながら、まだかまだかと待つ己が可笑しくて仕方がない。試合とは違う興奮に、シュナイダーは上機嫌である。
 恋など、ほど遠い位置にある感情だと思っていた。サッカーにしか興味がなく、勝つことだけを目標とし、飢えたように生きてきた。家族の離散から再出発。そして……この感情。あのジュニアユース大会、結果は準優勝と納得のいくものではなかった。しかし、あの大会を通じ、何よりも得難いものを手中に収めることができたのは確かだ。もし勝っていたならば、いま己がここに居るのかどうか…そればかりは分からない。
 広い駅構内を歩き回り、いったん外へ出る。目の前には六車線の大きな道路が広がっており、多くの車が行き交う。駅の真正面にはバス停もあり、ひっきりなしにバスが止まっては動き、を繰り返している。
 バスから降りてくる人物ジッと見つめては、このバスも違う、とため息をつくシュナイダー。バスがやってこないときにはキョロキョロと辺りを見回し、待ち人の姿を見落とさぬようにと、目を凝らしていた。どうやらまだ彼の姿はない。待ち合わせは駅で、と決めていた。しかし、思い出してみれば、駅のどこで、とまで彼と話をつけてはいなかったのだ。
「失敗した……」
 がらにもなく頭を抱えてしまったシュナイダー。連絡を取ろうにも、もうここに来てしまえば、連絡のとりようがない。少なくとも、己が歩いている時に彼と出会うことはなかった。それだけは言える。
 さて、どうしたものか…。頭の中で解決策を検討しながら彼は少しだけ足を進める。煉瓦状に重ねられた石造りの駅。出入り口のすぐ横に飾られている、ライオンとも鷲ともつかぬ不思議なレリーフの前に立つ。基本、待たせることがあっても、待つことはそうない。駅に隣接するように建てられている高い時計塔を見上げれば、約束の時間まで、残り十分…。
 気が急いていたのだ。とにかく彼との繋がりを絶ちたくなくて。繋がることのできる約束が、確実な約束が欲しかった。そうした気持ちが己を動かしたと言っていいだろう。一度目、彼と出会ったことが偶然なれば、二度目は必然となる。そして三度目は…。
 初めて会ったのはジュニアユースのとき。噂が現実となって現れた瞬間、それが初めての出会いだった。心強い味方となり、不思議と彼とは息があった。お互いサッカーに関しては天性の勘というものが働くのだろうか、彼の行動が手の取るように分かった。突然その姿をみせ、他の者を圧倒させる強さを誇る彼との出会いは、己の中での一つの感情の分岐点となったに違いない。しかし、この時点ではまだ彼との出会いは偶然に過ぎなかった。いくら己の中で分岐点となっていたとしても、それは己の感情の中での出来事でしかない。
 そして、この偶然に捕らわれていることは確かだった。別れが近付くにつれ、試合中でなくとも目で追うことが多くなり、無意識に彼の姿を探してしまう。合宿中であろうとフラッとどこかへ消えてしまう彼の姿を見つけるのはなかなか困難であった。しかし、その姿を見つけたときの安堵感は、どこか胸が痛むような切なさを含んでいた。まったく、女々しい感情に付きまとわれたものだと苦笑したことは記憶に新しい。だが、この感情こそ、己を変えてしまった大本であることもまた事実。偶然の出会いはあっという間に過ぎてしまったが、それでもこの感情に支配されている己は次にあう機会を期待してしまう。フランスでの初対面を終え、数ヶ月後、もう一度彼と顔を合わせることとなった。こんな短時間で会えるなど思いも寄らなかったと、がらにもなく顔を綻ばせたものだ。二度目の出会いは、意外……とは言えない場所。彼と顔を合わせてしかるべき場所で、その大きな姿を確認したとき、あの女々しいと笑い飛ばしていた感情は本物となり、もう笑い飛ばすことなどできなくなるぐらいに己の中で大きくなっていた。ホイッスルが鳴り響くフィールドの上、息を切らしながら、彼らは対峙していた。その表情は互いに柔らかく、語りはしないが、少なくとも視線だけはしっかりと絡まり合っていた。
シュナイダー!」
 思いに耽っていたシュナイダーは己の呼ぶ声にハッと顔を上げる。どこから聞こえたかと周りを見渡すが、声の主は見つからない。そうこうしている間にもう一度、シュナイダーの名を呼ばれた。今度ははっきりと。
 声のした方向に目を向ければ、確かにそこに彼は居た。時計は約束の時間から五分ほど過ぎていた。
「ミューラー」
「……すまない…その…」
 探していた。と彼は小さく本当に申し訳なさそうに謝った。何を謝る必要があろうか。曖昧な約束を取り付けたのは己の方なのだ。彼にそれを伝え説明するが、時間に遅れたのは自分の方だと、やはりもう一度謝られた。
「本当に気にしないでくれ。この駅に慣れていないのもあったけど、あのとき焦っていて場所まできちんと決めることができなかったオレが悪いんだ」
「……焦ってた?」
「そう、あれでも焦ってたんだぞ」
 デートをしよう。
 実
にシンプルでわかりやすい誘い文句。シュナイダーはシュトゥットガルトとの試合のあと、表情を変えることなくミューラーに言った台詞。シュナイダー自身、彼を誘う言葉を回りくどく、あれこれと悩んでいたにも関わらず、いざ本人を目の前にしてしまえばそんな思考は霧散する。そして、口をついて出た言葉が、これだ。
 自分でも何を言っているのか分からない、それぐらいに緊張していた。しかし、己以上に困惑していたのはミューラーではないだろうか。シュナイダーの言葉が意味するものが分からないほど子供ではない。
 デート…? とシュナイダーの言葉を反芻し、首を傾げている。その姿がまた愛らしいと思いつつ、うつつを抜かしている暇はない。まくし立てるように早口で都合の良い日と時間を彼に確認。その勢いに押されてか、ミューラーもつられて口早に答えてしまう。試合が終わった後の短い時間に取り交わされた約束。そのとき、場所について詳しく話をしていなかったのだ。ただ、シュトゥットガルト中央駅で…、と曖昧なものであった。これなら、時間に遅れても文句は誰も言えやしない。
「確かに少し早口な気もしたが、焦っていたようには見えなかったぞ」
 むしろ堂々として、喧嘩でも売られているんだろうかと思ったぐらいだ、と彼は笑いながら答える。喧嘩を売っていると思われていたとは…まさかそんな風にとられていたとは想像もつかなかった。誤解を解きたくても、何と言っていいのか分からない。
「喧嘩なんて売るわけがないだろ…」
 ボソリと呟いた言葉に、ミューラーはまたもや笑い始める。
「まあ、そんなに気にするな。おれもびっくりしてたからよく覚えていないんだ」
「やっぱり、驚いたか?」
「もちろん。いきなりデートしようなんて言われて驚かない奴はいない。ましてや、シュナイダーだぞ?」
 そのへんの女性ですら腰を抜かすだろう。彼はそう言って茶化してくる。そんなことはないとぶっきらぼうに返せば、彼は笑いをこらえていた。
「まあいいだろう、シュナイダー。せっかくこっちに来たんだったら、どこか行きたい場所があるんだろ? …と言っても、案内できるほど詳しくはないんだが」
 お前のいる場所ならどこでも…と言いかけて、これもまずいと口を閉じる。これではまた彼を驚かせるだけになってしまう。
「そうだな…行きたい場所……」
 いざそう言われると行きたい場所なぞ、考えたこともなかった。そう、シュナイダー自身、彼と会うことができればそれで良いという目的の元、この約束を取り付けたに過ぎない。ただ、本当にそれだけで、彼とこの場所で会うという約束をしただけで有頂天になっていたのだ。


 つづきは本編で!


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